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武徳 復刻版 第9弾「少年時代の試合の勝敗について」その2


「少年時代の試合の勝敗について」

勝つことはとても尊いことです。試合で優勝することは素晴らしいことです。
しかし、それだけが空手の稽古の目的ではありません。入門当時には才能豊かで稽古量よりも才能が上回り、入門当初は簡単に勝ったり、大会でも、大会の規模もありますが、優勝したりします。何年か経つと、いつも負けている子が、負けた悔しさをバネに地道な稽古を努力を継続して、実力をつけてきます。さほど努力をせず才能が勝っていると、試合の勝敗は気になりますが、より努力することを嫌う傾向にあります。才能より稽古量は高まっていません。そして負けこんでいくことがあります。

そうすると周りの人、例えば道場の先生、家族、道場の仲間たちが「なんで勝てないんだ」「もっとがんばれ」と叱咤激励してくれます。このことがストレスやプレッシャーとなり、心が堅くなり折れてしまい人間的な心の成長ができなくなってしまう場合があります。そのうちカラテの稽古が嫌いになり、カラテそのものを恨んでいる子も出てきます。そしてカラテを辞めて親子の関係まで悪くなってしまうケースも出てきます。将来的に一般の世界チャンピオン、全日本チャンピオンを目指すなら話は別ですが、少年の時の勝敗を過度にこだわらない方がよいと思います。

試合が終わった後に一番初めに勝ったことを褒めたり、負けたことを責めたりしないで、次の5つのポイントを聞くことをお勧めします。
一番目に稽古通りにできたのか。
二番目に勇気をもってできたか。
三番目に集中してできたか。
四番目に最後まであきらめない心をもってできたのか。
五番目に礼節を守ることができたか。
を聞いた後に勝敗によって良い所、悪かった所を話すという順番が良いと思います。これからもこの4つのポイントを乗り越えてゆこうという、挑戦心が生まれてきます。4つのポイントのハードルを乗り越えていくことが人間的な心の成長と、空手の技術のハードルも乗り越えていくこと、高めていくことになります。

道場責任者もそうですが、特に保護者の皆さんには、繰り返しますが、はじめに責めるのではなく、先にこの5つのポイントを話していただき最後に勝敗で良いところ、足りないところ、できなかったところを話し合っていただきたいと思います。

そして何より大切なことは、今こうして自信や勇気をもっていられるのは、カラテの稽古をしたおかげと思えるようになることだと思います。

また指導者もこのように思っていただける指導を命と情熱を傾け、そして謙虚さをもってしていかなければなりません。

大会は、自分自身を磨く試練、修練の場と位置付けることが良いと思います。